過去開催の展覧会情報 2019

 
 

 
つづきのつづき

広告写真を中心に幅広く活躍している
眞野敦さんの写真展を開催します。
2015年に続き「さんしんギャラリー善」では2回目の個展です。
ライフワークとして続けている世界各地への旅、
その光景を自身の感性で切り取った
空気感漂う写真をご覧ください。
 
写真は記録であり、見る人にとっては
未知の世界への導きでもあります。
レンズを通して語りかける心地よい光景は、
眞野さんが「部屋に飾りたい写真」と語るように、
心豊かな時間をもたらします。
今回のタイトルは「つづきのつづき」。
前回から現在、そして、未来へと続く
写真の存在感を伝えます。
 
(文/寺坂厚子)
 
 

 

 
 

 

 

 
 

染付金魚鉢 径46×高14cm

染付金魚鉢 径46×高14cm

小枝真人展~染付 Blue&White

 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 白く澄んだ磁器に、藍濃淡の描写が映える小枝真人さんの作品展を開催します。小枝さんの染付は、素材を生かした形の美と題材となる藍模様の絶妙なバランスが作品の魅力を高めています。「藍と白は、主役と脇役ではなく、5対5の存在と考えています」という主張。素材の白と模様の藍を巧みな技で調和させた空間を生かすデザインは、洗練された印象で、現代生活の中にも自然に溶け込みます。また、モチーフとなる自然の生き物たちが生き生きと表情豊かに表現され、語りかけてくるようなユーモラスな存在であることも魅力です。鳥、金魚、鯨など、自然の中で息づく生き物たちを愛情豊かに描いています。飛び出しそうな躍動感ある描写は、卓越した表現力ならではの技です。常にしなやかな描写で洗練された印象に仕上げる表現力と「濃(だ)み」という色の濃淡を表す手法の極意とも言えます。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 小枝さんは、1999年に第46回日本伝統工芸展に初入選以来、用と美を念頭に、使う人の気持ちにより添う作品を発表しています。「染付は過去の技術をそのまま伝承しているように思われますが、そこに現代の感覚を取り入れることで、自分らしい染付が表現できればよいと思います。決め手は感と技。それを自分の中で常に一定にしたい」という信念の元で創作に取り組んでいます。日本工芸会正会員として活躍しながら、2019年春から愛知県立芸術大学准教授として指導者の立場でも陶芸に関わっています。2013年に続き2回目のさんしんギャラリー善での個展では、新たな題材として取り組んでいるモチーフが一堂に揃い、ハーモニーを奏でます。

(文/寺坂厚子)
 
染付香炉 鯨 径9×高14cm

染付香炉 鯨 径9×高14cm


 
染付花器 翡翠 径22×高38cm

染付花器 翡翠 径22×高38cm

染付花器 雀 径13.5×高27.5cm

染付花器 雀 径13.5×高27.5cm


 
染付魚紋そば猪口 各径8×高6cm

染付魚紋そば猪口 各径8×高6cm


 
撮影/眞野 敦

 


インスタレーション/「Slow Slaughters」mixed media、10.5m x 5.5m ×2.5m 、2019

インスタレーション/「Slow Slaughters」mixed media、
10.5m x 5.5m ×2.5m 、2019

山本美知子展~Slow Slaughters

 
 
インスタレーション/「Slow Slaughters」mixed media、10.5m x 5.5m ×2.5m 、2019(撮影/Enlightened Photography)

インスタレーション/「Slow Slaughters」mixed media、10.5m x 5.5m ×2.5m 、2019
(撮影/Enlightened Photography)


 
Michiko's new installation reflects her father's dying and the fragility of life and all nature.
‘Personal tragedy and natural disaster often can be slow,quiet,and invisible much like climate change,but powerful beauty can be found in such poignant moments.’
Michiko Yamamoto

 
 現在、私がイギリスで取り組んでいるのは、「Climate Change Art」と呼ばれ、気候変動問題をアートを通して考える・知ってもらうというものです。気候変動の研究者と協働で作品を作ることもあります。気候変動の影響、特に、地球温暖化などは、他の災害に比べ、その被害や状況を視覚化しにくいと言われています。ただ、その影響はゆっくりと、静かに、でも深く、確実に私たちの環境を蝕んできました。
 同じ様に、私の父も、長い間、がんや認知症に苦しみ、ゆっくりと色々なものを、失ってきました。楽しい思い出、大切にしていた犬、健康な体、家族の記憶。今回の作品は、失われていく自然と、現在、危篤となっている父を想い、制作しました。私たちは、残酷な災害や個人の経験の中にも、強い愛や美を感じることができます。そんな愛や美を感じていただければと思います。

(山本美知子)

繊細で美しく詩的な表現が魅力
 インスタレーションや版画など、様々な表現方法を用いて創作に取り組んでいる山本美知子さんの作品展を開催します。
 山本さんは、幼少期を日本で過ごし、その後、ニューヨーク州立大学を経て、ペンシルベニア美術アカデミー、ペンシルベニア大学などに在籍し、油絵、彫刻、版画などを学びました。現在はリーズ大学で研究しながら、ロンドンを拠点として活動しています。
 日本を離れて故郷の自然美などを思う気持ちが増したと語る山本さん。現在の思いをインスタレーションや立体作品で表現します。見る者を包み込むような空間をお楽しみください。


 

Slow Slaughters(部分)
撮影/Enlightened Photography
 

浮遊するカタチの記憶 F100 油彩 2019年

浮遊するカタチの記憶 F100 油彩 2019年

渡辺有葵展~無重力的平面

 

生き生きとした彩色でスピード感あふれる筆致が魅力

 写実と抽象を織り交ぜた、独自の世界を展開している渡辺有葵さんの作品展を開催します。絵画は作者の心を読み解く楽しみがあります。また、対面した時の直感で新しい世界に踏み込むことも可能です。渡辺さんの作品を通して心に響く時間を過ごしていただきたいものです。
 「写実と抽象は水と油のようですが、混ぜると何か新しいものが生まれるような創作意欲が沸きました。色のエネルギーを表現することを考えると、どちらも区別する必要がないと感じています」という渡辺さん。作品に描かれている人物を通して、作者のストーリーを想像してはいかがでしょうか。油絵画家の赤堀尚氏やドイツ在住の画家・ダニエルリヒター氏の影響を受けたという渡辺さんは、生命力を感じさせる色彩で迫力のある作品を描いています。
 「小さな感情の爆発を白日に仕掛けた花火のように表現したい」と語る渡辺さんは、音楽を聞きながらイメージした絵を描くことが好きで、DJの友人の奏でる音を聞きながら筆を動かすこともあるそうです。また、バンジージャンプを体験したとき、重力からの解放感を味わい、天地がない状態をイメージした作品が誕生したそうです。アクティブな日々の中から誕生した独自の視点が心地よい世界です。

(文・寺坂厚子)
不安定の中の安定さ 291.0cm×194.0cm 油彩 2018年

不安定の中の安定さ 291.0cm×194.0cm 油彩 2018年

作品の中に込めた表現

インスピレーション

インスピレーション

絵の具の厚み

絵の具の厚み

写実

写実

にじみ

にじみ


 
 
不安定の中の安定さ 
(4点とも部分)
 
 
PHOTO/眞野 敦

 
多数の応募をいただいた
さんしんギャラリー善の夏の特別企画。
写真家の眞野 敦さんが撮影した
ポートレイト写真を展示します。
家族や友人との思い出のひとコマを
写真家の視線を通して捉えた一瞬からは、
様々なドラマが感じられます。
ぜひ、会場でご覧ください。
また、8月10日(土)には眞野 敦さんによる
イベント「スマホでインスタ映えする写真の撮り方教えます」も
開催いたします。
参加無料、申込不要で時間内であれば随時参加可能ですので
ぜひお越しください。

スマホでインスタ映えする写真の撮り方教えます。

「サイズはサイズ」1963年

「サイズはサイズ」1963年

池田 満寿夫 展

 

 版画、油彩、水彩、陶芸、そして作家、映画監督など、多岐にわたる分野で活躍した池田満寿夫氏(1934〜1997)の作品展を開催します。
 1982年から熱海市に住み、多様な創作活動を展開していた池田氏。その貴重な芸術世界を「さんしんギャラリー善」で心ゆくまでご覧下さい。

 
 

流れる風景(6月) 水彩ガッシュ、白亜地、寒冷紗、パネル 610×727mm 2019年

流れる風景(6月) 水彩ガッシュ、白亜地、寒冷紗、パネル
610×727mm 2019年

好宮 佐知子展
 
 
日々のこと(11月) 水彩ガッシュ、和紙 174×825mm 2019年

  日々のこと(11月) 水彩ガッシュ、和紙 174×825mm 2019年


 
 

日々目にした光景を記憶に留め、
その記憶を頼りに描いている

 
 穏やかな感性で描く世界が魅力の好宮佐知子さんの作品展を開催します。表面的には透明感のある色調でありながら、幾重にも重なる色のハーモニーが美しい水彩画。現代的な配色を生かして描いた壁画など、光と影を巧みに操る独自の世界を確立しています。
 好宮さんは、大学で油画科に入学します。「何を表現するか悩んだ時期がありました。心に感じた情景、記憶に残る情景を描いてみようと感じた瞬間から世界が広がりました」と語るように、心象風景ともいえる優しい表現が今も水彩で表現されています。
 大学時代にイタリアで出会ったフレスコ壁画に魅了され、大学院では壁画を専攻します。その後、世界遺産ガッラ・プラチディア廟のモザイク保存修復活動へ参加する機会に恵まれました。現在は、壁画技法を学ぶなかで得た経験を生かして作品制作に取り組んでいます。
 緻密な表現方法を取り入れる時代もありましたが、東京から三島に転居し、日々の暮らしで感じる豊かな自然、家族との時間などが加味され、大らかな新しい感覚の世界が描かれています。今回の個展では、フレスコ特有の美しい発色を生かした小作品も展示します。

(文・寺坂厚子)
 
目覚めの時間(12月) 水彩ガッシュ、白亜地、寒冷紗、パネル 380×457mm 2019年

目覚めの時間(12月) 水彩ガッシュ、白亜地、寒冷紗、パネル 380×457mm 2019年

 

 
 
 
 
 
 

吸い込まれていく音(1月) フレスコ 227×220mm 2019年

吸い込まれていく音(1月)
フレスコ 227×220mm 2019年

 

流れる風景 - 夏(8月) フレスコ 径95mm 2019年

流れる風景 - 夏(8月)
フレスコ 径95mm 2019年

 
 
 
 
 
 
 
 

PHOTO/眞野 敦

イルモ w19×d14×h14cm

イルモ w19×d14×h14cm

広井 敏通

イベント
 
 
クロコダイルシップ(部分) w190×d38×h38cm

クロコダイルシップ(部分) w190×d38×h38cm


 

 ペーパーアーティストとして活躍している広井敏通さんの個展を開催します。広井さんの作品は、建築に用いるような緻密な設計図を元に制作されています。優しいイメージの作品もシャープなラインを追求している作品も、すべて完成予想図に沿って創り上げる職人技の仕事です。
 かつて、映画「2001年宇宙の旅」から得た発想で創作した宇宙船は、白を基調とした研ぎ澄まされたフォルムが印象的で、素材が紙であることを感じさせない作品として話題になりました。「スケール感を表現するためには、細部までディテールにこだわり、完成度を高めることが重要」と語るように、以後も妥協を許さない姿勢で次々と作品を発表しています。
 広井さんは、オリジナルの形を重要視するためイメージした形に到達するまで研究を重ねています。雑誌「ディノス」の表紙では、毎回、洗練された広井ワールドの作品が話題になりました。近年は、アニマルシリーズとして、空想の世界に存在する動物を愛らしく表現。動物の性格を考えながら、紙ならではの素材の温もりを感じさせる、子供も大人も楽しめる作品を発表しています。
 一方で、空間をアートで彩る活動も行っています。伝統的な「美濃和紙のあかりアート展」では審査員で活躍。また、下田市で14年間続いた「風の花祭り」では、花の形をしたかざぐるまで会場を彩る企画を主宰してきました。鮮やかな配色のかざぐるまが風に揺れ、多くの人々の心を和ませていました。今回の個展では、今までの作品の紹介と共に「花のかざぐるまを作ろう」イベントも開催します。

(文/寺坂厚子)

 

アニマルキッズ

アニマルキッズ


 
花のかざぐるま

花のかざぐるま


 
メリル w47×d40×h55cm

メリル w47×d40×h55cm


 
PHOTO/眞野 敦

Westward/部分(水彩・コラージュ) 210mm×295mm

Westward/部分(水彩・コラージュ) 210mm×295mm

河田 ヒロ展
 
羽根ペンのある静物(水彩・コラージュ) 210mm×305mm

羽根ペンのある静物(水彩・コラージュ) 210mm×305mm


 
Monk's Fields(布) 200mm×220mm

Monk's Fields(布) 200mm×220mm


 
谷(水彩) 145mm×110mm

谷(水彩) 145mm×110mm


 
Website:
  https://hirokawada.blogspot.jp/
Instagram:
  https://www.instagram.com/hiro.kawada_artist/
今まで「ひとつひとつ」仕事をしてきた、今の仕事はその積み重ね。これからも「ひとつひとつ」……

 
 イラストレーション、挿絵、コラージュ、ミクストメディアなど幅広く活躍中の河田ヒロさんの個展を開催します。数々の作品の中から原画と出版物、水彩画を展示します。
 河田さんは、幼い頃からの「絵を描く人になりたい」という思いをデザインという方向で仕事につなげました。ステイショナリーを扱う会社と契約し、イラストレーターとして活躍後、持ち前の行動力で活動の場をイギリスに広げました。The Art Group Ltd. では、アート・ポスターなどの作品を発表し、ライフスタイルマガジン『COUNTRY LIVING』のイギリス版ではレギュラー・イラストレーターを務めます。多くの経験を積み帰国した河田さんは、作家の庄野潤三さんとの出会いから表紙画や挿絵を担当することになりました。挿絵は作品のイメージを理解した上でさりげなく表現することを求められます。ここでは、和を感じさせる挿絵を添えました。多くの作品を彩った、余韻のある表現は今も読者の心に刻まれています。常にアクティブに創作活動をしているように見える河田さんからのメッセージが印象的です。
 「呼吸を整えてゆっくりやると、仕事が悦びに変わる。悦びから生まれる仕事は、心からの仕事。これからも人に心が伝わる仕事ができたらと願います」
 自身の感性を大切にした創作への思いを伝える、東京と沼津で主宰するコラージュと水彩の教室では、2019年初夏に念願の英国へのアートツアーを企画、現地のクラフトアーティストたちとの交流をはかるそうです。
(文/寺坂厚子)
 
Juniper(水彩・コラージュ) 310mm×220mm

Juniper(水彩・コラージュ) 310mm×220mm


 
PHOTO/眞野 敦

「図書館の庭で拾う」越谷市立図書館 2017年

「図書館の庭で拾う」越谷市立図書館 2017年

ナガクボケンジ展

 

 
黙々と台座を作る作業は、時間を埋めることでもあります。同じスタイルを続けることは、ただ繰り返すという作業です。自分にとってはごく自然な、呼吸をするようなことなのです。ナガクボケンジ

「図書館の庭で拾う」越谷市立図書館 2017年

「図書館の庭で拾う」越谷市立図書館 2017年


 

 インスタレーションという手法で作品を発表しているナガクボケンジさん。2012年に続き、さんしんギャラリー善では2回目の個展を開催します。会場を埋め尽くす主役は桂やヒバの木を用いて作った10センチ角の白い小さな台座。何度も白い色を重ね塗りした美しい小箱です。その台座の内部をくりぬいて時計のムーブメントを設置します。その台座には小さな葉、枝、石など、ナガクボさんが愛おしむ品々が装飾されています。前回は、規則正しい配置の展示でしたが、最近は、ランダムな並べ方であっても主張が伝わると感じているそうです。
 ナガクボさんは、お父様の仕事の関係で小学校時代に駿東郡清水町湯川に移転しました。慣れない土地で過ごした日々。友人と遊んだことよりも湯川の地でひとり過ごした思い出が残っているそうです。今回は、その思い出の地から採取した品で彩りますが、自然のなかで過ごした思い出というよりも、そこに居たという自分の存在を確かめるために湯川の品々を選びました。

 愛らしい時計は1分間で1周し、少し停止して、再び動き始めます。会場全体に約1500個設置された台座から響く音は、決して揃うことはなく、思い思いの音色が響きます。「これは何の音?」と感じ、視線で音の根源を探し当てた時に驚きを感じるかもしれません。それぞれが奏でる音とその情景を楽しんでいただきたいものです。

(文/寺坂厚子)
 
「この窓の外をひろう」さんしんギャラリー善 2012年

「この窓の外をひろう」さんしんギャラリー善 2012年


 
 

アクシス・ムンディ/世界軸 ─D52形蒸気機関車72号機─(部分) 225.0×540.0cm 高知麻紙、顔料、染料、墨、箔、泥 2015年

アクシス・ムンディ/世界軸 ─D52形蒸気機関車72号機─(部分)
225.0×540.0cm 高知麻紙、顔料、染料、墨、箔、泥 2015年

金子朋樹展

 

 
山祇考 ─連なる、重なる、繋がる─  245.0×540.0cm 高知麻紙、顔料、染料、墨、箔、泥 2018年

山祇考 ─連なる、重なる、繋がる─ 
245.0×540.0cm 高知麻紙、顔料、染料、墨、箔、泥 2018年


山形の山々。富士山やヘリコプターなども登場。「場所性を重視する自己にとって、静岡と山形の反復運動はさらに重要な意味を持つようになった」というように、不変の自然観に思いを馳せる作品。

 

 日本画家の金子朋樹さんは、壮大な自然と自身の記憶にある情景を調和させた趣のある作品を発表しています。幽玄の世界のような優しいタッチの奥深く、金子さんの描く世界が浮かび上がります。「巧みな技」で表す透明感のある日本画です。
 御殿場市で生まれ育った金子さんは、身近に自衛隊基地や機関区などがあることから、ヘリコプター、機関車などの生活に密着した題材が作品のモチーフとなることも多くあります。しかし、直接的な表現ではなく、水面、またはフィルターを通して見るかのような透明感のある表現力で、見る人の中にも優しい揺らぎを感じさせます。この金子さんの創作に対する思いが込められている言葉がタイトルで用いた『パントノミー』。ドイツや日本の哲学者が用いていた言葉です。
 「幼い頃から絵を描くことが好きで、自分の心で受け止めたものを絵筆で表現してみたかった。情景を描こう。心にあるものを描こうと考えて富士山も含めて、身近な情景を作品に反映させていました」と語ります。また、小学生から書を学び、白い和紙の高貴な美しさと、その和紙に染みる墨の美しさを受け止める感性を備えていることも相まって、絵画の中に独自の世界を展開しています。サブタイトルには、日本画の流派のひとつである土佐派の絵師、土佐光起の言葉で「白紙も模様のうちなれば、心にてふさぐべし」を引用しています。「白紙(余白)は単なる白では無く、物事の有り様や様子を表している大切なところだから、あえて何も描かなくても、心を持って大事にしていきなさいというような意味で、今の自分の座右の銘みたいなものです」と語ります。2015年より東北芸術工科大学美術科専任教員として山形市にアトリエを構えた後は、御殿場と山形、それぞれの印象的なシーンを生かした風景が誕生しました。画家が心に響く一瞬を切り取って描くとしたら、ふたつの土地は様々な表情で作品に登場しています。大学で教鞭をとり、作家としての創作、展覧会の企画など多方面で活躍する金子さん。芸術家グループ『ガロン』でも活躍しています。
(文/寺坂厚子)
 
百代草、花咲きて(部分) 230.0×170.0cm 杉板、顔料、染料、箔、泥 2018年

百代草、花咲きて(部分)
230.0×170.0cm 杉板、顔料、染料、箔、泥 2018年


 
Photo/眞野 敦
「パントノミー」……日本、東洋の芸術の特徴が、 芸術と生活の深層的融合であり、自分の表現や日本画そのものが まさしく生活の中に一体化している状態と感じています

序章 改組新第1回日展 2014年

序章 改組新第1回日展 2014年

仲村 渉 鍛金(たんきん)展

 

 
具象の美、装飾の美、シンプルな形の美しさ……。時間の流れとともに、表現したいものが変化しています。
Serioso 改組新第4回日展 2017年

Serioso 改組新第4回日展 2017年

 
暁刻の夢 改組新第2回日展 2015年

暁刻の夢 改組新第2回日展 2015年

淵に沈む記憶 第29回日展 1997年

淵に沈む記憶 第29回日展 1997年


 
夢みる種 第40回日展 2008年

夢みる種 第40回日展 2008年

 伊東市在住の鍛金家、仲村渉さんの個展を開催します。
 鍛金とは、金属を熱し、ハンマーで叩きながら成形する作業です。その歴史は古く、世界中の様々な地で金属を加工して、装飾品や武器などが作られていました。日本では、弥生時代に大陸から伝わった金属文化にその起源を遡ることができます。仏教美術品の製作などに用いられたことから、技術的な発展を遂げ、多種多様な技巧を施す作家の存在も確立してきました。薄い一枚の金属を叩いて表現する作業、現在では、工芸品としても確立されています。
 仲村さんの作品は、約1ミリの銅版を鉄のハンマーで叩いて写真のようななめらかな表情に仕上げています。ですので、それぞれの作品の中は空洞で、叩くとキーンという音が聞こえてきそうな繊細な仕上がりです。また、「夢みる種」は叩きながら具象的なモチーフを表面に装飾した高度な手法を用いて仕上げています。金属の持ち味を読み取りながら仕上げていく作業は、経験を経ることで作家ならではの豊かな個性を感じさせる作品となります。大学卒業後、会社員生活を経て、金属造形家の鬼頭正信氏と出会い、製作を手伝う日々から鍛金を学びました。徐々に公募展への出品を始め、第17回日本新工芸展、第29回日展に初入選します。その後、独立し、伊豆高原に工房を構えて作家としての活動を始めました。自然界から産出される金属を加工しているにもかかわらず、温もりのある優しい肌触りを感じさせる作風が魅力です。

(文/寺坂厚子)